江戸時代からたくさんの運河と水運で栄えてきた深川は、これまでのおよそ400年の間に火事や地震、戦争とさまざまな災害を経験してきました。その度に街を再建した根気強い住民たちの思い、そして生活や文化のレイヤーが幾重にも重なり今があります。また、庶民が多く暮らしていた地の自由な気風は脈々と受け継がれ、新しい文化も生まれています。
気候変動やパンデミックがある現在、私たちは何を感じ取り、どのような表現で街にレイヤーを重ねていけるでしょうか。このアートプロジェクトは、「本」という記憶媒体を軸に改めて風土と向き合い、街を提案します。
「もしかしたら、開催中に緊急事態宣言や感染の拡大はあるかもしれない」と考えながら「本と川と街」の準備をしていました。完全オンラインという選択肢もありましたがわたしたちは、あえてオフラインを選択しました。(全てではありませんが)なぜ、この時期にオフラインイベントを実施することにしたのか。それは、第3の感染症への恐怖とそれに立ち向かう何かを探し求めてでした。
人々のつながりを分断するような、感染症。わたしたちは、これまでの生活を見直し、ニューノーマルで持続可能(サスティナブル)な世界へシフトを迫られています。生活の急激な変化。その中心にデジタル技術は不可欠でした。デジタルやネットワークの技術的な革新だけがサスティナブルでニューノーマルの世界と思えず、なにか違和感のようなものを感じているのも事実です。
「アナログ」であるからつながるものも多く、ネットワークのスピードが速くなり、その情報がいかに多くなってもこぼれ落ちてしまうのもが存在しています。その「こぼれ落ちたもの」にこそ、わたしたちが大切にしているものが、あるのかもしれません。レコード、カセットテープ、FMラジオから聞こえる音楽には言葉にはできない、独特な雰囲気あります。「こぼれ落ちたもの」には言葉や形があるのもではなく、そして目に見えるものではありません。
だからこそ、このタイミングでリアルの素晴らしさや、逆にデジタルがもたらす、距離を超えた交流だったりを、変化の中で見つめ直す必要があると感じています。コロナが再び感染の拡大をはじめ、私たちは立ち止まろうとしています。今すぐにでもたちどまる必要があるのかもしれません。でも、そのこぼれ落ちてしまう何かを、もう少しだけ探してみようと思います。
おまけにご参加ありがとうございました。
人から人へ思いを届ける本。革から紙そしてデジタルに変わっても、ページを開けば、そこに人々の笑い声や悲しい別れがあります。図像や文字を拾い、人の手で編まれた本たち。本は記憶そのものであり、私たち自身でもあるのです。
多くの川が流れる深川。江戸から令和まで時代が変わっても川の流れは変わりません。わたしたち深川っ子を見守ってくれる川。震災や戦争で多くの人が亡くなった川。川は私たちの心のふるさととも呼べる場所です。
沢山の人が住んでいる街。それぞれの生活があり、工夫を凝らした商店があります。住む人が変わっても深川は深川です。花見をして、神輿を担ぎ、川で夕涼みして、神社で手を合わせる。私たちの営みが積み重なり、街の記憶へと紡がれていきます。
本も川も街も、様々な歴史や文化、そして人々の思いを内包している記憶装置のようなものです。その、本と川と街で、深川の側面を掘り起こし、リフレーミングして新しい本を作るようなイベントを企画しました。ページを捲るように街を回って、舟にゆっくりと揺られながら、人との出会いを楽しんでください。角を曲がると、そこには新しい深川があります。
2020年のオンラインアーカイブを順次公開していきます。
現在、2020年開催のレポートを作成しています。
「本と川と街」実行委員会
公益財団法人東京都公園協会、隅田川マルシェ実行委員会
TOKYO ART BOOK FAIR、東京都現代美術館
NPO法人 江東区の水辺に親しむ会、高橋商店街振興組合、深川資料館通り商店街協同組合、松林院華厳院、LYURO 東京清澄、KAIKA 東京、(株)キョーダイ社、 下町探偵団、(有)フリップ、note architects、hage、gift_lab、(株)森木ペーパー、舟遊びみづは、夢観月、深川美楽市実行委員会、深川界隈の寺院、ヱビス印刷工業(株)、江戸東京旧水路ラボ本所支部、暗渠マニアックス、BOOKSりんご屋、あずま屋文具店